大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和44年(行ケ)27号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕引用商標は、訴外チバ・リミテッドを商権標者とする商標であつて、……その指定商品が本願商標のそれと共通するものであることが認められる。そして、引用商標から「チバゾール」の称呼が生ずることは明らかである。

3 そこで、本願商標の称呼について判断する。

本願商標「DIVERSOL」は、登録出願人である原告の商号の一部分「DIVER」と、英語の「solution」または「soluble」の略語である「SOL」とを結合した新造語であることは、原告の主張その他本件口頭弁論の全趣旨に徴してこれを認めることができる。しかし、この商標が、本件審決当時において、当該取引分野で右採択理由に由来した特定の称呼をもつ商標として広く知られていたという事実は、主張も立証もない。したがつて、本願商標からいかなる称呼が生ずるかは、その取引分野においてこの商標を見る人が、自然にどのように発音するかにかかつているといえる。

4 ところで本願商標は、……同一字体を用い、同じ大きさの字を同じ間隔で一連に「DIVERSOL」と書き現わしてなるものであり、また前記のような商標採択の理由は構成自体から知る由もないところであるから、本願商標に接する者が「DIVER」の部分を「デイバー」または「ヂバー」と発音し、「SOL」の部分を「ソル」または「ソール」、あるいは「ゾル」または「ゾール」と発音し、これを一連に「ヂバーゾル」または「ヂバーゾール」と発音することは、わが国における英語、ドイツ語等の普及度とくに本願商標の指定商品の取引者、需要者のもつこれら外国語の知識、理解にかんがみて十分ありうることである。そして、これが繰り返し発音され、さらには簡易を好む取引上の便宜から、「ヂバゾール」と呼ばれるであろうことも、十分考えられる。

したがつて、審決が認定した「ヂバゾール」の称呼は、本願商標から生ずる自然の称呼であるといえる(それが自然の称呼として唯一のものであるか否かはしばらくおくも)。そして、これが前記引用商標の称呼と紛らわしいことは、いうまでもない。

5 附言するならば、英語の「DI」は(これに子音が続く場合)、「ダイ」と発音することも「デイ」(発音記号の「di」)と発音することもあり、原告主張のように、前者だけが自然の発音というわけのものでないことは、例証を挙げるまでもない。また、発音記号「di」に相当する音を、わが国では、かな文字で「デイ」、「ディ」、「ヂ」または、「ジ」と書き表わし、これを発音するのに「ヂ」(これを「ジ」と書いても、読む発音は通常の日本人にとつて、何ら異なるところはない。)とも呼ぶことは、「ヂーゼル」、「ヂレンマ」等の例によつてきわめて明らかである。

さらに、商品の区分第一類に属する商品を指定商品とする商標で、欧文字の末尾に「SOL」を附したものは、その「SOL」の部分を「ゾール」と読ませるものがきわめて多いことは、<書証>により、これを認めることができる。

6 よつて、本件審決は正当であつて、そこに原告主張の違法はなく、その取消しを求める原告の請求は失当であるから棄却……する。(古原勇雄 杉山克彦 楠賢二)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!